近詠

谷川和子

小鳥

一人遊び好きな小鳥をみて飽きず

誰も来ずメールも無き日小鳥来る

小鳥来る図鑑繙く指忙し

唇に指立てて小鳥のゐる合図

探鳥会の人には見えている小鳥

小鳥来るしあはせいつぱい振り撒いて

この森が好きで幾千鳥渡る

下田育子

赤阪村

槌音のよく響く日や稲架を組む

お天道様尊ぶ暮し稲架かける

一村に余りあるほど秋晴るる

天空に近づく棚田曼珠沙華

稲の束背負ひ嬉しき重さなり

栗ごろごろ赤阪村の栗御飯

穫り入れを了へて棚田に十三夜