華凜主宰の俳句
髪の冷
白き月その身に宿し寒牡丹
侘助や姉と慕ひし人のこと
上方の役者ぶりよき寒鴉
冬菊に小雪てふ名を付けたかり
雪の夜の吾の言の葉の雪となる
天心の月に道あり瀧凍つる
寒星の一つおとうとかと思ふ
久女の忌戻り来し夜の髪の冷
そと置かれ文のごとくに梅一枝

雑詠 巻頭句
時雨るるや人はほろりと消えてゆく
森本昭代
句評 目の前にいた人が消える。時の雨と書く時雨のように、天へと
帰っていったのだろう。夫恋の句である。誰もがこの世に生き、ほろりと
消えていくという定めを感じた。 華凜
雑詠 次巻頭句
冬の月無音で帰る消防車
安野妙香
句評 大気が澄んで空の藍が深まっているせいか、冬の月の輝きは
畏怖を感じる。消防車とあるので火事の後であろう。死者も出たの
かもしれない。言葉にはないが、静かな哀しみが句から感じられる
のは筆者だけであろうか。 華凜
誌上句会 特選句
和田華凜主宰選
裸木となりて又兵衛桜かな
中谷まもる
中谷まもる副主宰選
眼も脚も達者なうちに鶴に会へ
前田昌子
金田志津枝選
初旅の地図になき川渡りけり
水口康子
柳生清秀選
炭継いでまた静寂といふ時間
有本美砂子