華凜主宰の俳句
声の記憶
栗剥いて妻をさみしと思ふ夜も
十三夜声の記憶の辻にあり
枇杷咲くや遊女屋にある天女池
見返るは惜しむことなり一葉忌
早世の人に捧げむ冬薔薇
萩の風明治の俳徒みな若し
柿吊す神を迎へし道の辺に
根の国の音近づけて瓢の笛
白足袋の見ゆる八岐大蛇かな
雑詠 巻頭句
思ふとは別れたること思ひ草
金田志津枝
句評 「思ひ草」に心が重なった物心一如の句。人は出会い、いつか
別れが訪れる。思い草の名に姿にこの世の定めを見た作者。
深い句である。 華凜
雑詠 次巻頭句
居待月天の岩戸のやうに雲
吉田るり
句評 『古事記』の天の岩戸伝説を句に用いたことで月の出を待つ空、
そこに懸かる厚い雲が突然神話のように感じられる。アマテラスは
太陽神。月の句としては類を見ない面白い比喩。 華凜
誌上句会 特選句
和田華凜主宰選
月の供華十八畳を開け放ち
山形惇子
中谷まもる副主宰選
炎天を走るお帰り言ひたくて
浅野宏子
金田志津枝選
透明な水を吸ひ上げ曼珠沙華
𠮷田知子
柳生清秀選
染み黒きつなぎのままの夜学生
大見 康