華凜主宰の俳句
羽衣
扁額の「心」てふ字の夏めきぬ
羽衣のあらばあふちの花の辺に
逆光の海に船ゆく花とべら
潮満つる薄暑の月の港かな
小さき傘軒に吊して花空木
暁に産声あげて淡竹の子
路地奥に水の匂や鉄線花
女らの厨かしまし祭ずし
水中花問はず語りのことば消ゆ

雑詠 巻頭句
後書のごとくに残る桜かな
太田公子
句評 人にはそれぞれ毎年の桜に纏わる物語がある。残る桜をその物語の
「後書」と思い眺める作者。写生会での一番人気の句。諷詠誌の編集後記を
長年務める作者ならではの言葉との出会い。 華凜
雑詠 次巻頭句
咲き満つるとき花冷の定まりぬ
金田志津枝
句評 「花冷」とは美しくまた寂しさを伴う季語だと思う。満開の花の時、
その美しさと寂しさは頂点に達するという。「定まりぬ」に真っ直ぐな心と
強い意志を感じた。 華凜
誌上句会 特選句
下田育子選
祭笛ミトコンドリア騒ぎ立つ
福田光博
古山丈司選
亀鳴くは鐘の余韻か天王寺
逢坂時生
有本美砂子選
春愁や百から順次七を引く
川原一樹
岩田雪枝選
春夕焼北上川を流れゆく
𠮷永友子