近詠

小林一鳥

身辺の草花

一本の草にも永き日の及ぶ

葉桜といふ制服に着替へたる

雪柳怒濤の如く咲きにけり

薔薇の園諷詠日和賜りし

姫小判草とて風に抗へる

清楚なる夜明の色の花水木

時計草十時十分三十秒

福島津根子

海よりの風

遙かなる紀淡海峡夏霞

雛芥子の彩を揺らしてをりにけり

新緑を抜け新緑の只中へ

林立の滴る山の息吹かな

そこここに卯の花咲ける杣の道

国生みの茅花流しに吹かれゐて

海よりの風を映して田水張る