句集 月華

和田華凜 諷詠主宰

自選十五句

結界の黄泉比良坂より時雨

光る音して薄氷の溶けにけり

海底に沈む都の上に月

胡弓の音風に揺るがず風の盆

能面の月華を宿す白さかな

父の座は空席のまま花筵

夜を待つやうに置きある蛍籠

花八手島の鬼門はこのあたり

水都けふ月の都となりしかな

役者絵は写楽がよろし梅二月

瀧の上に天へと続く道のあり

しづしづと月下にシテの歩みかな

猪鍋や丹波訛の虚子贔屓

流し雛見送る空に昼の月

こいさんの扇子いとはんより小さし

句集 月華 2022年3月3日初版発行
発行所 ふらんす堂

 能面の月華を宿す白さかな

 標題『月華』は月の光、月光のこと。
諷詠四代の主宰がそれぞれ「瀧の夜半」「花の比奈夫」「祭の立夫」「月の華凜」と
呼ばれていることもあり、この題を選んだ。 華凜