華凜主宰の俳句
愛宕山
初秋や愛宕山へと雲動く
海風のはげしき日なり霊迎
盆の月上りて命重さうに
稲妻に発止と浮ぶ沖の船
浜に着く二百十日の石かろし
窯元の七つある里月見豆
浮舟の墓を訪ねて露の宇治
よすがあり庵に台湾杜鵑草
丈高く活けて花野の風情かな
雑詠 巻頭句
万緑を抜けて心の襞増ゆる
鈴木貞雄
句評 万緑という季題は生命力に溢れている。見渡すかぎりの緑の森林を
抜けて来た作者の心には新しい力、感性の織り成す「心の襞」が生まれて
いたのだと。読むだけで心が豊かになるよう。見事。 華凜
雑詠 次巻頭句
目つむれば滝音我を包み込む
下橋潤子
句評 この句を読んだ瞬間、思わず目を閉じた。すると筆者にも包み込む
ような滝音が聞こえた気がした。俳句は言葉の写生。聴覚に訴え、記憶を
呼び覚ます。 華凜
誌上句会 特選句
和田華凜主宰選
アイロンを当てる背中の扇風機
𠮷田知子
中谷まもる副主宰選
小津映画見てゐるやうな雲の峰
福本せつこ
金田志津枝選
箱庭より母の呼ぶ声聞えくる
末永美代
柳生清秀選
戦禍の地思ふゴツホの麦畑
逢坂時生