華凜主宰の俳句
冬の宮
純白のシテの装束冬の宮
さみしさは文には書かず冬ごもり
埋火や小面何か言ひた気に
南座は近くて遠し都鳥
蕪村忌の京島原にちらと雪
着流してこその文士の褞袍かな
三味の音も小唄も松原屏風より
玉三郎醜女も演ず古暦
喪に服すことも忘れて河豚食ぶる
雑詠 巻頭句
もみぢ散ることさへ涙もろくゐる
吉田るり
句評 俳句には感性が大切。作者の純粋で美しい感性には常より感心
している。この句を見た瞬間、作者の心が筆者に深く伝わり共鳴した。
選後に作者のご主人様が年末にお亡くなりになったと。心よりご冥福を
お祈り致します。 華凜
雑詠 次巻頭句
路地一つ違へて迷ふ近松忌
久保田まり子
句評 「近松忌」という季題をよく捉えている。近松の心中物をふと思い
出す。生きる事を道とし、その路地を一つ違えてしまうこともあると。
暗喩の見事な句。 華凜
誌上句会 特選句
和田華凜主宰選
過ちの二つや三つ木の葉髪
太田公子
中谷まもる副主宰選
先見ゆる暮しに慣れて日向ぼこ
古山丈司
金田志津枝選
月食の闇を楽しむ初冬かな
井田國敬
柳生清秀選
噛み合はぬ会話の弾む日向ぼこ
黒津知江子