近詠

髙木利夫

みちのく晩秋

牧閉ざす日の杣道の風粗し

遠野てふ名にみちのくの秋深む

南部曲屋の馬塞にも柿すだれ

星空に濡るる一夜の秋の宿

わが知らぬ町の一日の秋まつり

南部囃子や相伝の帯締めて

どんどはれにて炉咄も尽きにけり

林 右華

大綿日和

歴史訪ふ思ひ思ひの冬帽子

古墳へと冬紅葉また冬紅葉

冬ざれのどの石室も傾ぎをり

大綿に風土記の丘といふところ

大綿や史実はいつも哀しかり

太子の里訪ひし大綿日和かな

帰り花ここは太子の眠る里