近詠

柳生清秀

畿内の春

耕の無駄なく動く老の鍬

八荒に魁荒るる浪速場所

遅咲の水仙こその秘むるもの

今泣いた子も楤の芽も笑む陽気

貝寄風の吹く住易き街なりし

葱坊主裏より入る飛鳥寺

蛍烏賊光尽して果てにけり

有本玲子

バックハグ

若夏や言の葉美し万座毛

島遥かテラスの朝餉石蓴汁

空に揺れ海に揺れゐて茅花の穂

沖縄の旅二期作の田植中

紅型に火の色燃えて仏桑花

バックハグして夕焼の水平線

くちなしの花枕辺に旅果つる