福本せつこ
野沢温泉村
牛蛙声ふるはせて北信濃
どの部屋も花の名つけて宿涼し
夏霧の晴れて絵本のやうな村
どこまでも夏野の続く野沢村
雲の峰戸隠山も妙高も
もろこしも玉子も茹でて麻釜の湯
汗かいて外湯めぐりも野沢村
人涼しあつ湯ぬる湯と教へくれ
外湯には小さき神棚髪洗ふ
大湯出てぶだうジュースと端居して
端居して真向ひに見ゆ道祖神
外湯出て祭提灯ともる頃
路地沿ひにたけのこ祭屋台の灯
たけのこ飯信濃の人のやさしかり
千曲川音頭聞こゆる祭かな
鯖󠄀缶も入れてたけのこ汁うまし
飯山に仏壇通り濃紫陽花
笹ずしの笹の葉ほのと北信濃
四十年ぶりに逢ふ人夏薊
水尾てふ涼しき地酒酌みかはす