第3回諷詠大賞「諷詠大賞」の俳句

福本せつこ

野沢温泉村

牛蛙声ふるはせて北信濃

どの部屋も花の名つけて宿涼し

夏霧の晴れて絵本のやうな村

どこまでも夏野の続く野沢村

雲の峰戸隠山も妙高も

もろこしも玉子も茹でて麻釜の湯

汗かいて外湯めぐりも野沢村

人涼しあつ湯ぬる湯と教へくれ

外湯には小さき神棚髪洗ふ

大湯出てぶだうジュースと端居して

端居して真向ひに見ゆ道祖神

外湯出て祭提灯ともる頃

路地沿ひにたけのこ祭屋台の灯

たけのこ飯信濃の人のやさしかり

千曲川音頭聞こゆる祭かな

鯖󠄀缶も入れてたけのこ汁うまし

飯山に仏壇通り濃紫陽花

笹ずしの笹の葉ほのと北信濃

四十年ぶりに逢ふ人夏薊

水尾てふ涼しき地酒酌みかはす