華凜主宰の俳句
夜のミモザ
涅槃図の満月にして空かなし
よく香る江戸紫のヒヤシンス
山峡のすこしく動き雪割草
夜のミモザ月の鼓動に眠られず
つれずれに画集めくりて春の風邪
どことなく雨むらさきに立子の忌
冴返る日の一献は父に酌む
歳時記に日月美し桃の花
沈丁の香に常の日の常ならず
雑詠 巻頭句
空開けてありしか春を待つために
柳生清秀
句評 春を待つという明るい未来への祈りの心が「空開けてありしか」
という宇宙の広がりを引き寄せ一句となった。素直な心で四時を友とす。
華凜
雑詠 次巻頭句
蕗の薹水の匂を持ちて生る
森本昭代
句評 諷詠会の折、机上に庭から採って来たばかりの瑞々しい蕗の薹が
置かれていた。「水の匂を持ちて生る」の措辞そのもの。作者の眼の力に
感服。 華凜
誌上句会 特選句
和田華凜主宰選
天と地に別れし我ら去年今年
吉田るり
中谷まもる副主宰選
さくら色のお誘ひの文春近し
下田育子
金田志津枝選
年賀状ほのぼのとして癖字かな
谷本義明
柳生清秀選
春暁の一駅ごとに明けてゆく
古山丈司