華凜主宰の俳句
春の雷
収録は渋谷スタジオ春めきぬ
あをあをと暮れて遍路の鈴のこゑ
着慣れたる久留米絣や椿満つ
金銀のしぶきとなりて鮎上る
盛塩のひときは白し花の雨
春の雷壬生の舞台に鬼女の立ち
かたかごの花に吉野の雨の粒
煩悩の我が身にいくつ紫木蓮
芥子の散る間を一蝶の彷徨へる
雑詠 巻頭句
凍返る証なりけり月蒼く
古山丈司
句評 今年は暖かな冬の後、春になってから凍返る日が多かった。凍り
つくような大気に空を見上げると蒼く美しい月が作者の心を捉えた。
それを「凍返る証」と断定し、秀句が生れた。 華凜
雑詠 次巻頭句
涅槃図の亀如何な声もて歎く
今井勝子
句評 お釈迦様の入滅の時、人も獣も全てが歎く様子を描いた「涅槃図」を
見ていると、慟哭が聞こえてくるよう。その中に亀もいる。「亀鳴く」と
いう季題もあるが想像のもの。亀の歎きの声に着目した作者の鋭い感性。
華凜
誌上句会 特選句
和田華凜主宰選
ラテン語を学ぶ日課よ花ミモザ
福本せつこ
中谷まもる副主宰選
雪女出さうこの降り積りやう
松岡照子
金田志津枝選
水の香を零して摘みぬ根白草
山田東海子
柳生清秀選
春雨や大きいはうの傘を買ふ
浅野宏子