小林一美
夜神楽
黒土にまみれて田打鍬高く
早苗待つ田に満満の水鏡
高千穂の静かな雨の田植かな
国生みの里の匂の青田風
稲咲いて田水ゆるりと動きけり
音立てて流れに還る落し水
櫓田の二番穂浅黄色深め
萩咲くや神庭作る氏子どち
神楽宿開く氏子の誇らしげ
空稲架や野良着素襖に着替へけり
夜神楽のルーツ鈿女の舞うてより
神楽面つけて忽ち神となる
神づかづか客席へ目覚まし神楽
神楽面外せば十五の美少年
夜神楽や湯気の出るものふるまはれ
八百年受け継ぐ赤き神楽面
ほしやどんの腰の入りたる神楽舞
夜神楽の朴訥として神の恋
夜神楽の面をはみ出す手力男
夜神楽のしらじら明けて戸取の舞