近詠

岡田隆太郎

我が町の春

春寒の日は温めて紹興酒

深酒のあしたは妻の蜆汁

野遊の車に積みし炊飯器

園長は法衣彼岸の保育園

門前に春塵の古書拡げ売る

春陰や鏝絵の並ぶ宿場町

海峡の航路妨げめばる船

木下紀子

初蝶

初蝶の転びまろびて庭の石

足摺の岬に映える藪椿

道の辺に車を寄せて春の虹

花の昼箸の袋に爪楊枝

海に出て戸惑ふばかり春の川

こでまりの風に遊ばれひもすがら

今日一日をとめに返り桃の花