2024年8月の俳句

華凜主宰の俳句

たいくつさうな指

香水はミツコ人には物語

夏帯の花鳥六区に仲見世に

厨よりきれいな声す夏暖簾

風鈴を揺らしたいくつさうな指

紫陽花の藍を尽して奥吉野

畳むには惜しき花ある扇子かな

閉館の絵画展より夕日傘

銅像の目の黙深し五月闇

航路いま赤道直下夏の月

雑詠 巻頭句

新緑の夜を戻りて身の湿り

今井勝子

句評 下五の「身の湿り」が見事。読み下した瞬間に筆者の身に
湿度が伝わった。新緑の命のざわめく夜を作者自身に宿している。
艶の句。 華凜 

雑詠 次巻頭句

敦盛の修羅を舞ふべく更衣

青山夏実

句評 能楽師の「更衣」を詠んだ句であろう。武人がシテになる能を
修羅物と言い、修羅道に落ち苦しむ様が描かれる。「平家物語」に
多くある。「敦盛」は殊によい。 華凜

誌上句会 特選句

和田華凜主宰選

万緑を逆さに湖の深さかな

森本昭代

中谷まもる副主宰選

父の忌の太田胃散の上の蟻

古山丈司

金田志津枝選

古墳秘め風土記の丘の緑美し

太田倫子

柳生清秀選

流行を少し取り入れ更衣

多田久子