近詠

菅原くに子

般若之芝

結界の立つ時刻あり薪能

青芝の舞台般若之芝といふ

奥行きを眺む正面薪能

篝火に闇の蠢く薪能

笛の音の導く山場薪能

後ジテに霊気宿りぬ薪能

中天に残る半月薪能

柴尾きぬえ

母なる大河

花吹雪浴びる城址の武者返し

ロマンある宇宙をめざせ揚雲雀

薔薇園の百の香に酔ひしれる

天に月地に輝くは月見草

風薫る母なる大河筑後川

神々し夏草を食む牧の馬

闇染める屋形船の灯鵜飼の火