近詠

下田育子

サロマ湖

オホーツクに向ひ馬鈴薯掘り進む

地平線まで唐黍の続きをり

薪を積み網走はもう冬仕度

秋晴や満員なりし摩周号

珊瑚草能取の秋の真つ盛り

サロマ湖の澄む天空の鏡かに

名月や北の果てにて旅終へる

冨田忠夫

名月

名月とまづ記したる日記かな

周防灘凪ぎて名月昇り来る

二の宮に宝刀飾る良夜かな

名月や近江女の面に紅

四王司山の山影浮かぶ望の月

ロードショー余韻残して居待月

長編の終章間近寝待月