華凜主宰の俳句
花の頃
くちびるは花より淡し花の頃
まだ雨を知らぬ初花なりしかな
心いま浮世はなるる桜人
踏切の音をとほくに夕桜
けふの私あしたはゐない夕桜
花の門出でて入りぬ花の闇
小面の白に揺らぎぬ花篝
花冷や刺身包丁すつと引き
遺言を書きてペンおく花月夜

雑詠 巻頭句
椿咲く踏絵の歴史残る島
下田育子
句評 踏絵の哀史を今なお感じる五島列島を訪れた作者。真っ青な空と
海の美しさに歴史を思い佇む。そこに一途に咲く真っ赤な椿の命に胸を
打たれた。 華凜
雑詠 次巻頭句
春早しシャガールの絵の青い馬
増田紀子
句評 春とは名ばかりで体感的にはまだ寒いが、その光に以前南仏の
シャガール美術館で観た浮遊する青い馬の絵がふと思い出された作者。
鋭い感性が生んだ取り合わせの句。 華凜
誌上句会 特選句
有本美砂子選
やうやくに静かな時間蜆汁
藁科稔子
岩田雪枝選
実朝忌文武両道侭ならず
柳生清秀
下田育子選
実朝忌文武両道侭ならず
柳生清秀
古山丈司選
今はただ太郎ひとりが雪下ろし
山形惇子