華凜主宰の俳句
かなたの月日
国栖笛にかなたの月日奥吉野
梅真白月宮殿の名をもらひ
蕗の薹生命線の上におく
心浮く文に二月と書くだけで
湯屋へ行く下駄の躓く春灯
能舞台ありし二の丸春の雪
雪のごと白き落雁加賀の春
懸想文桐の箪笥のぎいと鳴り
覚えたる御名口上紀元節
雑詠 巻頭句
行くほどに道の遠のく枯野かな
久保田まり子
句評 この句の「枯野」に芭蕉の、虚子の枯野を思った。現実の枯野が
俳諧の道と重なる。「行くほどに道の遠のく」という措辞にははっと
させられた。深い心の目を持つ作者。 華凜
雑詠 次巻頭句
フロイデと何度も歌ひ年暮るる
有本美砂子
句評 一読、心の中に第九が流れ出す。筆者は昔神戸フロイデ合唱団に
属し、年末には大阪フィルの演奏で第九を歌っていた。「フロイデと
何度も歌ひ」には感服。作者の美しい心から生れた佳句。 華凜
誌上句会 特選句
和田華凜主宰選
自分史はまだ白きまま冬薔薇
森本昭代
中谷まもる副主宰選
密柑山太平洋は父のごと
山田純子
金田志津枝選
裸木の残心といふ立ち姿
今城 仂
柳生清秀選
九十九髪品よくセツト年の暮
柴田ふさよ