華凜主宰の俳句
春の星
春の海神話のごとく明けにけり
如月や伊予の和紙選り書く手紙
雛飾りつと悲しみの薄れゆく
八重椿深紅人住み替りても
まんさくの夜の色にもかなひしに
春蘭や新刊の書に金の帯
後の世のことは知らねど月朧
むらさきの物身に付けて立子の忌
二月二十七日 稲畑汀子先生帰天
潤みゐてひときは美し春の星
雑詠 巻頭句
葱刻む音にさみしさ集り来
金田志津枝
句評 厨で一人葱を刻む作者。その音がよく響いた。葱を刻む時思い
出すのは家族の笑顔。今は誰もいない。涙が溢れ出した時句が出来た。
葱の名句の誕生である。 華凜
雑詠 次巻頭句
六方を踏むごと絵凧揺れ出しぬ
黒田冬史朗
句評 正月の御空を舞台に見立てた。見得を切る役者絵の絵凧が風に
揺れ出す様を「六方を踏む」という歌舞伎の形を詠み込むことで
華やかな一句となった。 華凜
誌上句会 特選句
和田華凜主宰選
寒月のひらりと剥れ落ちさうな
𠮷田るり
中谷まもる副主宰選
日向ぼこあれこれ有りて現在地
小河フク子
金田志津枝選
峡に生き独りに生きて独り屠蘇
𠮷泉守峰
柳生清秀選
身の丈に生きて夫婦の春炬燵
古山丈司