2024年1月の俳句

華凜主宰の俳句

日華

 宇陀・室生寺三句

オリオンの盾くつきりと宇陀の冬

ひとところ女人高野の紅葉濃し

龍神の日華を放つ紅葉寺

柿食うていまだ菩薩に遠く生き

別宮はひつそりとあり冬桜

幕間に紅引き足して近松忌

顔見世やかぶりつきよりとちり席

自分史の中によきこと実南天

葱きざみ人をうらやむこともなし

雑詠 巻頭句

小鳥来て日がな慈眼に福耳に

鈴木貞雄

句評 心がほのぼのとして、幸せを感じる句。小鳥来るという
季題を慈眼福耳の措辞で明るい世界を創造した。作者の心が
穏やかなのだろう。 華凜 

雑詠 次巻頭句

水騒がず鳰沈みても浮びても

金田志津枝

句評 作者は瞬間の光を詠みとめる写生の名人である。万物には
命があり心がある。浮き沈みする鳰を見て水の心の閑けさを
捉えた作品。 華凜

誌上句会 特選句

和田華凜主宰選

枯れてゆくものの中なる正倉院

髙木利夫

中谷まもる副主宰選

茶の花や母の唄ふを聞かぬまま

今井勝子

金田志津枝選

秋の雨無の字の滲む写経かな

佐々木きぬ子

柳生清秀選

大樽の鉋の跡や冬近し

檜尾朋子