華凜主宰の俳句
ざはざはと
楊貴妃といふ紅梅の濡れもして
美しき眉根寄す妓よ春寒し
紅梅や隈取の紅尽したる
歌麿のをんな春呼ぶおちよぼ口
春障子きつねこんこん指の影
いぬふぐり言葉足らずの児のいとし
うらわかき風と遊びて下萌ゆる
椿落つ明日満つ月を待たずして
月満つるらし桜の芽ざはざはと

雑詠 巻頭句
初雪や胡粉を被たり高野杉
鈴木貞雄
句評 日本画の世界に入り込んだような句。奥の院へ続く高野山の
道を行く作者。高野杉に降り、朝の日をあびる初雪の輝きは貝殻を
くだいた画材「胡粉」のよう。凜とした空気感まで伝わってくる。 華凜
雑詠 次巻頭句
美しき牡鹿が道に恵方かな
久保田まり子
句評 神の使いと言われる鹿。古都奈良の鹿は神鹿とも呼ばれる。
「美しき牡鹿」の濡れるような黒黒とした瞳は「こちらが恵方で
ある。」と指し示しているように思えた。 華凜
誌上句会 特選句
和田華凜主宰選
夢よりも淡き色して母子草
水口康子
中谷まもる副主宰選
天下布武山河静かに初景色
加藤夕理
金田志津枝選
とんど焚く神輿庫には鍵かけて
山田東海子
柳生清秀選
忘るるもまた良きことや日向ぼこ
小河フク子