2022年7月の俳句

華凜主宰の俳句

花あやめ

宇陀の野に籠もて行かむ薬の日

玉繭に月を透かせてうす明り

地車に宮入といふ佳境あり

蛍袋今宵逢ひたいとは言へず

花入に有馬籠もて風炉点前

ぼうたんの月に音なく崩れけり

智恵子抄手にす卯の花腐しかな

したたかにむらさき籠めて花あやめ

文末にかしことありて花あやめ

雑詠 巻頭句

桜湯の香にもあるはなざかり

菅 恵子

句評 人の臭覚というものは時に視覚より大きな働きをする。桜湯の
花開く香りには華やかさ、そして懐かしさを感じる。その香にある
「はなざかり」を発見した作者の非凡なる感性に感服。 華凜 

雑詠 次巻頭句

大いなる伊吹の風に麦青む

藁科稔子

句評 ヤマトタケルの魂が白鳥となり飛び立ったと言われる伊吹山。
「大いなる伊吹の風」の措辞に心惹かれた。目の前に一面の青麦の
景が広がりゆく。 華凜

誌上句会 特選句

和田華凜主宰選

忘れもし忘れられもし月朧

久保田まり子

中谷まもる副主宰選

霾りし旅を語りて明けにけり

岡田隆太郎

金田志津枝選

腕時計父より借りて大試験

岡本和子

柳生清秀選

パレツトにたつぷりの青夏来る

猪谷美代子