近詠

石井のぼる

茶屋百年

樟若葉松尾の神は輿を出づ

付添の人は次の間著莪畳

あぢさゐの毬押し合うてゐて静寂

神苑に八つ橋かかり花菖蒲

いごつそうの里へ輿入れゆすらうめ

葉隠れや一条白き滝の水

布引の滝を眼下に茶屋百年

今井勝子

幽玄の杜

ゆらゆらといにしへの闇薪能

薫風に袂膨らむ能の舞

篝火に憂ふ小面薪能

シテの声四方にらうらう青葉風

薪能五重塔は漆黒に

薪能去るは消えゆくやうなりし

一幕の果てて覚える青葉冷