近詠

谷川和子

思ひのまま

小鳥来よ一と日しやべらぬ日の続き

思ひのまま歩きたき日や草紅葉

無人店多き丹波路草紅葉

落葉舞ふばかりここより杣の道

商標は大江の鬼の濁酒

瞑想に入るや名月引き寄せて

生きるとは思ひ出づくり鳥渡る

林 右華

茶禅一味

秋声の真中にありし南宗寺

甘露門潜りて秋の風となる

萩の寺茶禅一味といふ構へ

石庭の箒目正し月を待つ

禅堂の文殊菩薩や秋涼し

をちこちに手を合すもの秋の蝶

禅僧の鋏の音も松手入