金田志津枝 諷詠同人
自選十五句
海よりの秋声海に消えにけり
蛍火の草より草に零れけり
来し方の見ゆるや花の雲の中
麹町三番町の燕の巣
そんなとき笑つてみよと山笑ふ
鬼やらひだけは大きな声出して
捜すこと勿れ涼しきところに居
秋桜むかし絵踏の庭とあり
文字消えしことの露けき父祖の墓
セーターの赤に包まれ百二歳
栗ひとつ剥くためにあるよき時間
飛花と行く風と落花と遊ぶ風
沙羅の花子は吾が老に触れざりし
虫聞いてをり鍵穴を捜しつつ
薄氷に水のさびしさ見えにけり
天界へ届く囀米寿美し 華凜
金田志津枝さんは、私の母方の伯母である。教師だった彼女は幼い私に文学の
楽しさを教えてくれた師でもある。志津枝さんは花鳥諷詠の俳句をするために
生れて来たような人だと思う。彼女の話す声はまるで自然を賛美する囀のようで
ある。今私のもとに送られて来る志津枝さんの俳句は、天界にいる愛しい人達へ
届ける鎮魂歌である。
愛する伯母へ 諷詠主宰 和田華凜