華凜主宰の俳句
花便り
令和四年三月二十六日 長女美波結婚
届け出すだけの婚姻あたたかし
ひとづまになりしと届く花便り
貝寄風や島に育ちて島に嫁す
嫁ぎし娘髪にほやかに雛納
おかあさんと婿に呼ばれて花菜漬
子猫の名瞳の色に決めらるる
悪者のせうせう間抜け壬生狂言
桶取の面に潜みし春愁
壬生念仏身振り如何にも京ことば
雑詠 巻頭句
指ふれて薄氷水にもどしけり
梅野史矩子
句評 何気ない早春の一コマの写生句であるが、この句に深さを感じた。
女の指の熱により「薄氷」という儚い個体の命を「水」という命の
根源へと戻した作者。艶っぽさもある。 華凜
雑詠 次巻頭句
はんなりとうぐひす鳴くや京へ二里
谷川和子
句評 「京へ二里」の措辞が見事。一里が約四キロなので京から少し
離れた鄙の里を想像する。その里で鳴く鶯の声には落ち着いたはなやかさが
あったのであろう。 華凜
誌上句会 特選句
和田華凜主宰選
鳥雲に無口な酒は父ゆづり
古山丈司
中谷まもる副主宰選
天主堂絵踏の島の空のあを
野村国世
金田志津枝選
冬耕の人風景を抜けて来し
髙木利夫
柳生清秀選
日当りてドドドと落ちる屋根の雪
小林小春