2022年6月の俳句

華凜主宰の俳句

男の歩幅

花衣しめりて重く掛けにけり

年年にゆるびし女身花衣

春眠や整ひがたし寝起肌

絵師の筆より春愁のひと生るる

礼状を書く桜湯の開く間に

ふらここを漕いで夫あること忘る

春惜む都をどりのビラに雨

遍路鈴男の歩幅にて鳴りぬ

しやぼん玉吹くならこの虹を引きて

雑詠 巻頭句

七回忌てふことを告ぐこの花に

太田公子

句評 早いもので今年は父立夫の七回忌。父の発案で始まった夙川の
初桜吟行句会は、亡くなった今も続いている。作者はさまざまな思いを
「この花に」告げたことだろう。 華凜 

雑詠 次巻頭句

凍を解きこの世に戻る蝶真白

山形惇子

句評 一読、「この世に戻る」の措辞に心惹かれた。その蝶が真白で
あったという。凍蝶にあたたかい生命のいぶきが吹き込まれる様を見事に
写生された。 華凜

誌上句会 特選句

和田華凜主宰選

春行けば次の春待つ余生かな

森本昭代

中谷まもる副主宰選

三椏の花丁寧に黄の開く

𠮷田知子

金田志津枝選

白鳳仏拝して春を惜みけり

岩田雪枝

柳生清秀選

白子干す仕上げの味は風まかせ

柴田のり子