華凜主宰の俳句
男の歩幅
花衣しめりて重く掛けにけり
年年にゆるびし女身花衣
春眠や整ひがたし寝起肌
絵師の筆より春愁のひと生るる
礼状を書く桜湯の開く間に
ふらここを漕いで夫あること忘る
春惜む都をどりのビラに雨
遍路鈴男の歩幅にて鳴りぬ
しやぼん玉吹くならこの虹を引きて
雑詠 巻頭句
七回忌てふことを告ぐこの花に
太田公子
句評 早いもので今年は父立夫の七回忌。父の発案で始まった夙川の
初桜吟行句会は、亡くなった今も続いている。作者はさまざまな思いを
「この花に」告げたことだろう。 華凜
雑詠 次巻頭句
凍を解きこの世に戻る蝶真白
山形惇子
句評 一読、「この世に戻る」の措辞に心惹かれた。その蝶が真白で
あったという。凍蝶にあたたかい生命のいぶきが吹き込まれる様を見事に
写生された。 華凜
誌上句会 特選句
和田華凜主宰選
春行けば次の春待つ余生かな
森本昭代
中谷まもる副主宰選
三椏の花丁寧に黄の開く
𠮷田知子
金田志津枝選
白鳳仏拝して春を惜みけり
岩田雪枝
柳生清秀選
白子干す仕上げの味は風まかせ
柴田のり子