2023年5月の俳句

華凜主宰の俳句

祝ぐ心偲ぶ心

三月十九日、立子賞を祝う会小石川後楽園

忘るまじけふ初花に会へしこと

春瀧の音に洗はれゆく心

鳥声のいくつ重なる春野かな

祝ぐ心偲ぶ心も花の雨

みな染る桜に触れて来し風に

けふの命けふを満たして花万朶

べつかふ飴薄暮透せて夕桜

この辻に夜叉となるやも花月夜

たましひの身を離れゆく花衣

雑詠 巻頭句

生まるるも逝くのも一度二月尽

小林一鳥

句評 「二月尽」に注目。花鳥諷詠を提唱した虚子の誕生日は二月
二十二日。作者も同じ誕生日らしい。昨年二月二十七日に汀子先生は
帰天された。一度きりの生を深く思う月。 華凜 

雑詠 次巻頭句

焼きし野のやがて寂しき風渡る

古山丈司

句評 ふと芭蕉の〈おもしろうてやがて悲しき鵜舟かな〉を思った。
芭蕉の句は心の写生であるがこの句は野焼の風景を見事に写生された。
「寂しき風渡る」にある余情に感服。 華凜

誌上句会 特選句

和田華凜主宰選

梅咲くや宝梅てふはよき住所

小林一鳥

中谷まもる副主宰選

毛のなかの羊とり出すやうに刈る

野村国世

金田志津枝選

初雪はをさなでゆきし子の匂ひ

石川かずこ

柳生清秀選

絵馬の裏まで書く受験志望校

福田三千男