2023年7月の俳句

華凜主宰の俳句

薪能

草笛にあの日の風の記憶かな

立ち姿よき芍薬もそのひとも

 興福寺 薪能

薪能一差ごとに闇進む

後シテの般若現る青葉冷

番傘の内にぼうたん明りかな

松風に乾きし須磨の蛇の衣

触れてみて少し悔あり蛇の衣

鉄線花湯屋の小窓の夕明り

雨の日は文書く心額の花

雑詠 巻頭句

立てて弾く二胡の調べや柳の芽

中谷まもる

句評 二胡は中国の伝統的な擦弦楽器。その調べは郷愁と癒しを誘う。
この句から二胡の調べが風に乗って聞えたよう。曲は「蘇州夜曲」か。
「立てて弾く」と詠み「柳の芽」との取り合わせも上手い。 華凜 

雑詠 次巻頭句

暮の春九百号の稿仕舞ひ

太田公子

句評 作者は「諷詠」の割付けから最終校正まで全てに関わり、原稿も
彼女の自宅に届く。九百号に力を尽して下さった。「稿仕舞ひ」の安堵感が
伝わる。心より感謝。 華凜

誌上句会 特選句

和田華凜主宰選

台本の無き人生や花は葉に

林 右華

中谷まもる副主宰選

思ひ出の中の桜は散らざりし

吉田るり

金田志津枝選

立子賞受賞の余韻虚子忌かな

石川かずこ

柳生清秀選

若葉風マスクはづして深呼吸

浅野宏子