近詠

田村節子

塩瀬の帯

八つ橋てふ香合置かれ夏座敷

火を遠く水を近くに夏点前

黒といふ涼しきものに楽茶碗

利休箸するりと逃げる蓴かな

夏帯にはさむ服紗は水の色

単衣着て塩瀬の帯に鉄線花

掛香に今日のお稽古粥点前

山形惇子

神坐す島

このあたり石州瓦植田風

あご飛んで水平線を高くする

荒海に乗る遊船の舵さばき

梅雨晴の落暉ローソク島灯す

闘牛の引分けてふは物足らず

後醍醐邸今を淋しと牛蛙

万緑や幾百の神坐す島