2023年12月の俳句

華凜主宰の俳句

ホ句に捧げむ

宇治の月水音昂る戻り橋

生涯をホ句に捧げむ月の人

明日なくも良かり月華に包まれて

戯画絵巻秋の村雨聞くばかり

抱けば寝て置けば泣く子や辛夷の実

残酷な童話の中に木の実降る

逢おうかと思ふ林檎の赤ければ

花八手いくつ面持つ観世音

通り過ぐ和傘の人や枇杷の花

雑詠 巻頭句

地虫鳴く夜は濁つてをらざりし

山田東海子

句評 静かな秋の夜、秋は一年の中で最も大気が澄み爽やかな季節。
地虫の鳴き声が聞こえる里の空には星や月も輝いているのだろう。
「夜は濁つてをらざりし」が見事。 華凜 

雑詠 次巻頭句

曼珠沙華太宰入水を忘れざる

金田志津枝

句評 作者は三鷹在住。太宰入水の上水はすぐ目と鼻の先である。
今年は例年より多くの曼珠沙華が咲いていたと聞く。いつまでも
心に景が見える句。 華凜

誌上句会 特選句

和田華凜主宰選

名月や天空すべて月のもの

中村一雄

中谷まもる副主宰選

月に行けさうなる人と月を見る

菅 恵子

金田志津枝選

律といふ明治の人よ吾亦紅

古宮喜美

柳生清秀選

ヘルメット置きて汗拭く配達夫

唐澤米子