同行二人競詠五句 お題「山笑ふ」

小河フク子

種袋

ケーブルをすつと飲み込み山笑ふ

さらさらと未来明るき種袋

瀬田川の白き一艇花の雲

三月や夫の書斎に歎異抄

読み返す古き手紙や春ひと日

深澤幸子

驢馬の耳

蟻出でて早や行列を作りけり

ころころと仔山羊転げて山笑ふ

麗かや笹の葉食みて驢馬の耳

在るがまま皆尊しと花祭

アネモネに秘密ありさう黒き蕊