華凜主宰の俳句
水仙花
待春やきれいな紙を折りつぎて
越前の地酒きりりと水仙花
地震の日を見て来しやうな雪仏
寒紅や泣かぬ女でおし通す
愛伝ふ言葉難し寒の月
紅梅やおちよぼというて茶屋娘
月の夜のしら梅の青宿したる
料峭や父の名入りの輪島塗
禁色や唐くれなゐの寒牡丹
雑詠 巻頭句
牡蠣剥きの女は殻に埋れつつ
有本美砂子
句評 この句を読み下した瞬間、随分前に行った岡山の日生の牡蠣を
剥く女の姿が脳裏に浮かんだ。手際よく牡蠣を剥き殻に埋れてゆく。
その日の潮の匂までも。記憶と五感が呼び覚まされた。 華凜
雑詠 次巻頭句
綿虫にうすむらさきの夕べ来る
久保田まり子
句評 綿虫は光の加減で白、青、紫などの色に見える。夕日の色に
薄紫に染まる小さな綿虫から「うすむらさきの夕べ」と詠み時間と
空間を広げた。 華凜
誌上句会 特選句
和田華凜主宰選
大阪は橋より暮れて冬満月
古山丈司
中谷まもる副主宰選
寺尾逝くその日冬濤鳴りやまず
青山夏実
金田志津枝選
古備前の壺のぬくもり十二月
沖 省三
柳生清秀選
定員を超えて今宵の炬燵かな
藁科稔子