華凜主宰の俳句
月の牡丹
一振に月ふくらめる薪能
夏の月欠けてゆく日の戻り船
杣人の里のいろどり朴葉鮓
傾国の月の牡丹と思ひけり
一朶二朶樗の花に風遊び
夕刻は来し方ゆかし枇杷すする
夜の色せし風鈴に月の音
通ひ路を違へ梔子香る路
比奈夫忌や今の世眺む夏椿
雑詠 巻頭句
夕ざくらうすむらさきと気付くまで
梅野史矩子
句評 〈夕ざくら夕とは空の色のこと 立夫〉が思い出された。
むらさき色の空の色を写した夕ざくらを情感たっぷりに詠まれた。
「気付くまで」に時間と心の推移が見られる。 華凜
雑詠 次巻頭句
花の頃花の吉原跡を訪ふ
岩田雪枝
句評 満開の花に飛花落花の中、今は何もない吉原遊廓跡を吟行で
訪れた作者。「花の吉原跡」と詠み当時の栄華を花と重ね合わせた。
見事。 華凜
誌上句会 特選句
和田華凜主宰選
能面の眉に影あり春ともし
中谷まもる
中谷まもる副主宰選
縄屋てふ屋号残れり初燕
石村和江
金田志津枝選
四万十の下田の渡し徒遍路
小林一美
柳生清秀選
花の雨南部の塔はけぶりけり
信貴 宏