2024年10月の俳句

華凜主宰の俳句

祇園めく

稲光散骨の海彼方なり

吾亦紅石積むだけの鳥の墓

秋簾そろりと訪ね来るひとも

上京の月にさぶしき桔梗かな

祇園めく新橋色の秋扇

女郎花二階の奥の隠し部屋

晴の日は雨の紫菀に情寄する

菩提子の舞うて三界六道に

虫入りてより虫籠の濡れてきし

雑詠 巻頭句

月鉾の月を迎へる高さまで

菅 恵子

句評 祇園祭の鉾の中でも最も心惹かれる「月鉾」。その高さは二十六
メートルと山鉾の中で一番高い。鉾先の三日月が美しく輝く。「月を
迎へる高さ」の措辞が素晴らしい。 華凜 

雑詠 次巻頭句

廓跡巡りし夜の髪洗ふ

金田志津枝

句評 吉原の廓跡を吟行し、作者の心にはさまざまな思いが生れたので
あろう。女が髪を洗うとき、思いも共に洗い流す。哀しみであれば尚。
華凜

誌上句会 特選句

和田華凜主宰選

星燃えて鬼百合ばかり咲く野かな

吉田知子

中谷まもる副主宰選

追山笠の雨の中なる浄め水

梅野史矩子

金田志津枝選

父と世を隔てし夜の蚊遣香

古山丈司

柳生清秀選

夏の朝パン屋の隅のイートイン

中松育子