華凜主宰の俳句
祇園めく
稲光散骨の海彼方なり
吾亦紅石積むだけの鳥の墓
秋簾そろりと訪ね来るひとも
上京の月にさぶしき桔梗かな
祇園めく新橋色の秋扇
女郎花二階の奥の隠し部屋
晴の日は雨の紫菀に情寄する
菩提子の舞うて三界六道に
虫入りてより虫籠の濡れてきし
雑詠 巻頭句
月鉾の月を迎へる高さまで
菅 恵子
句評 祇園祭の鉾の中でも最も心惹かれる「月鉾」。その高さは二十六
メートルと山鉾の中で一番高い。鉾先の三日月が美しく輝く。「月を
迎へる高さ」の措辞が素晴らしい。 華凜
雑詠 次巻頭句
廓跡巡りし夜の髪洗ふ
金田志津枝
句評 吉原の廓跡を吟行し、作者の心にはさまざまな思いが生れたので
あろう。女が髪を洗うとき、思いも共に洗い流す。哀しみであれば尚。
華凜
誌上句会 特選句
和田華凜主宰選
星燃えて鬼百合ばかり咲く野かな
吉田知子
中谷まもる副主宰選
追山笠の雨の中なる浄め水
梅野史矩子
金田志津枝選
父と世を隔てし夜の蚊遣香
古山丈司
柳生清秀選
夏の朝パン屋の隅のイートイン
中松育子