近詠

山形惇子

おんぱらさん

桜井におんぱらさんといふ祭

のしかかる笙篳篥に蝉の声

浦安の舞の鈴の音夏越祭

菅貫や飾神馬を先立てて

色香よき楕円の茅の輪ありがたう

三輪音頭揃ひ浴衣の有志連

祓戸は三輪の馬場先夏越祭

石田陽彦

夏の色

形代の白さに心澄み来り

理由なき反抗と言ふ夏のあり

太陽に対峙せし赤百日紅

茶のスーツ脱ぎ透明な羽の蝉

紫の雲の棚引く夕焼かな

サングラス掛けて景色の静りぬ

一晩を蚊取線香燃え尽す