華凜主宰の俳句
いろはにほへと
見返りて愛染坂に春惜む
春陰に不動明王黙深し
霊水の春水にして音ゆたか
余りたる生などなかり躑躅燃ゆ
山藤の間に間に聞ゆ水の音
春の行く富士の頂白きまま
芍薬の蕾に真夜の息づかひ
地車や子の揺れやまぬ肩車
牡丹散るいろはにほへとちりぬるを

雑詠 巻頭句
一睡の夢のつづきの山桜
古山丈司
句評 一読、吉野山の桜が眼前に広がった。「一睡の夢」は人の世の栄華、
人生の儚さのたとえ。哀史を思いつつ山桜の美しさに魅了される。 華凜
雑詠 次巻頭句
鳥帰る倚松庵より見る夕日
丸田淳子
句評 谷崎旧居である倚松庵を訪れた作者は、夕日に染まる空を鳥が帰る
様子を眺めているのだろう。美しい物語のような一景。作者はいつも
さらりとお着物を着ている。 華凜
誌上句会 特選句
岩田雪枝選
花吉野全山煙る三万本
川原一樹
下田育子選
けふの帯考へてゐる朝寝かな
青山夏実
古山丈司選
ふきのたう摘みにお出でと生家より
小林小春
有本美砂子選
針穴を糸が逃げゆく目借時
水口康子