第1回諷詠大賞 諷詠賞の俳句

鈴木貞雄

山の辺の道の四季

畏くも忝くも初祝詞

金杯に日の注ぐごと福寿草

放飼してゐる宮の寒卵

たたなはる山紫に花の道

囀のほか音のなき道をとる

月光にふはり浮くもの春の山

薬膳の仕舞膳とて蓬餅

鉈彫の仏ゆたかに春惜む

くわくこうやおいうぐひすや朴の花

石仏の笑みそのままに夕立中

露坐仏の光景として虹かかる

山の辺の道駆け巡り一雷神

あまつさへ邪鬼踏まれゐる残暑かな

大神の虫凛凛と観月会

御饌絵馬を抜けし松茸膳に上る

山の辺の道の日和や稲架並木

露けしや一と夜かぎりの萱の御所

たけなはといふ華ぎの枯野にも

菰巻や幹には幹の臍のあり

白足袋に紫電一閃畏みぬ