華凜主宰の俳句
底紅忌
瀧音を追ふ瀧音の早さかな
夏芝居仁左はほろ酔ひ鳶頭
鯔背なり仁左履く黒き祭足袋
ばさと邪気祓うて降魔扇風
亡き人の歳はとらざり水中花
過去帳に師の名加り夏椿
親子とは許し許され月涼し
月涼し命に限りあることも
文机に古し季寄や底紅忌
雑詠 巻頭句
風鈴の音だけ聞いてゐたき日も
寺西圭
句評 南部風鈴の透き通るような音が聞こえてくる。その音は作者の心の深い所まで
響いてくる。今日だけはこの美しい音だけを聞いて俗世のことは忘れていたい。
素直に詠んでいて誰の心にも響く秀句。 華凜
雑詠 次巻頭句
日本海絵皿の如き大夕焼
黒田冬史朗
句評 作者は下関在住。「日本海」は玄界灘であろうか。「大夕焼」という大景を
「絵皿」に喩え、小宇宙を生みだした。巧みの技。燃えるような赤絵の皿が心に
見える。 華凜
誌上句会 特選句
和田華凜主宰選
やはらかき里の方言ねぶの花
佐々木きぬ子
中谷まもる副主宰選
白靴にしてはどうかと妻の言ふ
奥村芳弘
金田志津枝選
走馬燈修羅場と化する寸前で
井狩たかし
柳生清秀選
段ボール二枚を敷きて三尺寝
小田恭一