華凜主宰の俳句
恋のうた
冬瀧の白し初心の真白しと
朴落葉天上高き飛騨の宿
口切の正客にして江戸小紋
ももいろの羊羹うすく切る小春
松浦屏風に恋のうた詠む遊女かな
羽子板市隈取見事成駒屋
翁面外し庵の煤払
浄瑠璃の町の橋より都鳥
道ならぬ道も道なり近松忌
雑詠 巻頭句
船の名の読めて良夜の船溜
青山夏美
句評 十五夜の客観写生句である。作者はいつもは暗い船溜の船が月光に
照らされ、船の名が鮮明に見え読めたと言う。衒いのない措辞で月夜の
静かな美を表現。これが物の姿を描き、物の命にふれるということ。 華凜
雑詠 次巻頭句
裏通りとは木犀の本通り
今城 仂
句評 子供の頃、裏通りを抜けピアノの教室へ通う時木犀の香が流れて
来た記憶が甦った。裏通りは確かに木犀にとっての「本通り」。見事な
発見に共感の句。 華凜
誌上句会 特選句
和田華凜主宰選
大花野まつただ中に鐘を聞く
黒田泰子
中谷まもる副主宰選
一粒を一語と思ふ実むらさき
岡本和子
金田志津枝選
日々変る懸崖菊の真正面
大西芙紗子
柳生清秀選
秋の暮杣の子家路急ぎけり
立花綾子