華凜主宰の俳句
男伊達
掛香の楽屋の草履ととのへぬ
いつの世も涼しき目元男伊達
夏芝居恋し恋しが怨しや
夜の部の仁左は罪人夏芝居
奈良団扇口三味線のついと出て
箱庭の魚に水なきこと哀れ
風鈴の音とはいつも暮れ残る
目標は生きると書いて大暑かな
寝返りに伸びたる赤子月涼し
雑詠 巻頭句
蛍忌の蛍火を待つ水の音
金田志津枝
句評 立夫の忌日名が「蛍忌」となったことを知った作者はその事が
頭を離れず、蛍忌を詠み続けてたという。この句は東京に立夫がいた頃、
共に行った神田川の蛍火を思い詠まれた。 華凜
雑詠 次巻頭句
蛍忌の筆にもりたる黄の絵具
中谷まもる
句評 立夫は絵を描くことが好きであった。また黄色の花が好きであった。
〈黄が好きでばらの黄色はもつと好き〉と詠んだ父。蛍忌にそのことを
思いこの句が生まれた。
華凜
誌上句会 特選句
和田華凜主宰選
アルバムを繰るたび百合の香の揺るる
吉田るり
中谷まもる副主宰選
遠き日の大波小波蚊帳たたむ
中村満智子
金田志津枝選
ほうたる忌忘形見のやうに闇
山田東海子
柳生清秀選
草笛や白髪頭のビートルズ
宮下美和子