2023年9月の俳句

華凜主宰の俳句

男伊達

掛香の楽屋の草履ととのへぬ

いつの世も涼しき目元男伊達

夏芝居恋し恋しが怨しや

夜の部の仁左は罪人夏芝居

奈良団扇口三味線のついと出て

箱庭の魚に水なきこと哀れ

風鈴の音とはいつも暮れ残る

目標は生きると書いて大暑かな

寝返りに伸びたる赤子月涼し

雑詠 巻頭句

蛍忌の蛍火を待つ水の音

金田志津枝

句評 立夫の忌日名が「蛍忌」となったことを知った作者はその事が
頭を離れず、蛍忌を詠み続けてたという。この句は東京に立夫がいた頃、
共に行った神田川の蛍火を思い詠まれた。 華凜 

雑詠 次巻頭句

蛍忌の筆にもりたる黄の絵具

中谷まもる

句評 立夫は絵を描くことが好きであった。また黄色の花が好きであった。
〈黄が好きでばらの黄色はもつと好き〉と詠んだ父。蛍忌にそのことを
思いこの句が生まれた。
華凜

誌上句会 特選句

和田華凜主宰選

アルバムを繰るたび百合の香の揺るる

吉田るり

中谷まもる副主宰選

遠き日の大波小波蚊帳たたむ

中村満智子

金田志津枝選

ほうたる忌忘形見のやうに闇

山田東海子

柳生清秀選

草笛や白髪頭のビートルズ

宮下美和子