華凜主宰の俳句
花鳥の風
玫瑰や砂の入り来し旅の靴
束ねたる黒髪重し梅雨の月
沙羅散りて俗世の白をもらひたる
式部より納言ゆかしと文字摺草
候といくたび謡ひ能涼し
梅雨じめり音なくめくる謡本
海に入るやうにくぐりて夏暖簾
てのひらに息をしてゐる蛍かな
虚子筆の扇子花鳥の風止まず
雑詠 巻頭句
弊揺れて闇の妖しき薪能
今井勝子
句評 五月二十日興福寺の薪能での句。般若の芝に四面に張られた
網に弊が吊され、能舞台が結界となる。弊が風にざわざわと揺れる。
「闇の妖しき」の措辞が見事。 華凜
雑詠 次巻頭句
花街の名残一灯さみだるる
梅野史矩子
句評 かつて「花街」であった所にともる灯。そこへ五月雨が降り、
滲む景となる。それは時空を行き来し、過去を見ているように思えた
作者。情感溢れる句となっている。 華凜
誌上句会 特選句
和田華凜主宰選
紫陽花を抱へ優先座席かな
赤川京子
中谷まもる副主宰選
たかんなに郷里の土と新聞と
青山夏実
金田志津枝選
菖蒲の香身に添ふ齢となりにけり
前田たか子
柳生清秀選
新茶の香知覧の空を語り継ぐ
赤川京子