華凜主宰の俳句
漱石の猫
駄菓子屋の入口狭し風車
漱石の猫は三毛猫春の月
のどけしやバス待つ時間香立てて
囀の昼なほ暗き高野杉
みろく石片手に重し春かなし
花下抜けて愛染堂に休みけり
さくらにも余生と言へる時のあり
合の手は姉さの役目茶摘唄
島人の婚の約束花海桐
雑詠 巻頭句
涅槃図を巻けば衆生の泣き止みぬ
小林一鳥
句評 生きとし生けるもの一切の生物=衆生が嘆き哀しむ様を描く涅槃図を見て
いると泣き声まで聞こえてくる。巻き上げると同時にぴたりと泣き声が止む。
心の声までも写生。作者の俳諧魂に感服。華凜
雑詠 次巻頭句
百態に曲りいかなご煮上りぬ
今井勝子
句評 兵庫県の春の名産品と言えばいかなごの釘煮。「百態」の措辞がその姿を
見事に表現している。あちらを向きこちらを向き全て違う曲り様に煮上がる。華凜
誌上句会 特選句
和田華凜主宰選
窯元の子にぶらんこの庭のあり
髙木利夫
中谷まもる副主宰選
急ぎゐる花や心の追ひつかず
川合千鶴
金田志津枝選
涅槃西風親の期待にそへぬまま
佐々木きぬ子
柳生清秀選
雪洞を吊り墨堤の花を待つ
岡田隆太郎