2021年6月の俳句

華凜主宰の俳句

漱石の猫

駄菓子屋の入口狭し風車

漱石の猫は三毛猫春の月

のどけしやバス待つ時間香立てて

囀の昼なほ暗き高野杉

みろく石片手に重し春かなし

花下抜けて愛染堂に休みけり

さくらにも余生と言へる時のあり

合の手は姉さの役目茶摘唄

島人の婚の約束花海桐

雑詠 巻頭句

涅槃図を巻けば衆生の泣き止みぬ

小林一鳥

句評 生きとし生けるもの一切の生物=衆生が嘆き哀しむ様を描く涅槃図を見て
いると泣き声まで聞こえてくる。巻き上げると同時にぴたりと泣き声が止む。
心の声までも写生。作者の俳諧魂に感服。華凜 

雑詠 次巻頭句

百態に曲りいかなご煮上りぬ

今井勝子

句評 兵庫県の春の名産品と言えばいかなごの釘煮。「百態」の措辞がその姿を
見事に表現している。あちらを向きこちらを向き全て違う曲り様に煮上がる。華凜

誌上句会 特選句

和田華凜主宰選

窯元の子にぶらんこの庭のあり

髙木利夫

中谷まもる副主宰選

急ぎゐる花や心の追ひつかず

川合千鶴

金田志津枝選

涅槃西風親の期待にそへぬまま

佐々木きぬ子

柳生清秀選

雪洞を吊り墨堤の花を待つ

岡田隆太郎