2021年9月の俳句

華凜主宰の俳句

月光菩薩

禅僧の墨染衣沙羅の白

含羞草をとこの指に閉ぢしかな

白蓮や月光菩薩しづかなり

月鉾の護符に束ねて鉾粽

享保の佳き風起す扇かな

こいさんの扇いとはんより小さし

太郎冠者衣装高高土用干

御紋入り贔屓の茶屋の団扇風

玻璃の皿海に見立てて夏料理

雑詠 巻頭句

センセイサクラチリマスと一俳徒

松井良子

句評 「センセイサクラチリマス」の言葉を遺し、諷詠顧問同人の松井ふみを氏は
この世を去った。奥方の良子様がその言葉を句として、永遠に故人の魂を残した。
俳諧という文芸の極み。 華凜 

雑詠 次巻頭句

一巻は一夜語るによき蚊遣

大川生枝

句評 一句の十七音の中に小宇宙があり、読み手それぞれの心に物語が生れるような
秀句。一巻の蚊遣に懐かしい思い出が甦るよう。 華凜

誌上句会 特選句

和田華凜主宰選

日本一美しい村青い罌粟

久保田教子

中谷まもる副主宰選

さみだれてアンのお化けの森となる

丸田淳子

金田志津枝選

水の香の中を流るる火振の香

今城仂

柳生清秀選

梅雨深し空の蛇口を閉め忘れ

安野妙香