近詠

岩田雪枝

甲斐の山気

連山の谷間に甲斐の植田かな

若楓躑躅ケ崎の館跡

実桜や武田神社に能舞台

黄菖蒲の咲いて信玄公御墓所

山々に見守られつつ袋掛

山の気を吸ひて鈴蘭白清か

鈴蘭の仄かに匂ふ山路行く

菅原くに子

国境

西の富士東の筑波山登

山登る空を何度も手繰り寄せ

山登目指す山頂国境

登山道の馬頭観音旧街道

切り立ちし崖に滝音吹き出しぬ

滴りを受け止めてゐる石の肌

登頂の汗を称へてをりにけり