華凜主宰の俳句
単衣のひと
秋櫻子絶筆の書を曝しけり
黴の書に落款重し謡本
朱の衣ゆらら楊貴妃てふ目高
指南書のありても鳴らず水鶏笛
中折帽取りて鰻の肝所望
芝居観て江戸前鰻いただく日
便箋に小生とあり花菖蒲
ほたる橋渡り紫陽花浄土かな
推敲の単衣のひとの濃むらさき
雑詠 巻頭句
古九谷の青の涼しき山河かな
中谷まもる
句評 「涼し」という季題には体感的な涼しさと心性的な涼しさがある。
この句は古九谷の藍色に対する涼しさと山中温泉から大聖寺川上流の九谷村への
山河の景に対する二重の涼しさが心に感じられる秀句。 華凜
雑詠 次巻頭句
古茶酌みて男正座を崩さざり
柳生清秀
句評 コロナ禍となり二年目。籠り居の暮らしを丁寧に平常心を持って続ける
作者の一本芯の通った心が「古茶」「正座」などの措辞に伺える。 華凜
誌上句会 特選句
和田華凜主宰選
のどかさに指だけ起きし赤子かな
桧尾朋子
中谷まもる副主宰選
鮎美し吉野の月の色をして
和田華凜
金田志津枝選
それぞれに名のあるあはれ花菖蒲
黒田敦子
柳生清秀選
新しき恋してさらり夏衣
吉田知子